おうちで映画時間。

アマプラなどで見た映画の感想を書いています。

映画感想『ルーム』本当は世界ってもっと広いんだ。

 

『ルーム』2016年

 

狭い部屋で暮らす母と子は、ある男によって監禁生活を強いられていた。

なにも知らない5才の息子と生活している母だったが、

ある日、外の世界に行くために脱走を計画するのだった…。

 

狭い部屋の中にはベッドがあって、イスがあって、お風呂があって、テレビがあって。

偽物の植物と、ほんの少しのおもちゃもあって。

外の世界と通じているのは小さな天窓と、鍵のかけられた部屋のドアだけ。

そんな『世界』で毎日を過ごしている母と、その息子ジャック。

そして夜な夜な現われるひとりの男。

5才の誕生日を迎えたジャックに、母は『本当の世界』のことを教えます。

 

7年もの間、男によって監禁されていること。

外の世界にはたくさんの人間がいて、本物の動物がいて植物があること。

『部屋の中』しか知らないジャックは混乱しますが、

そんな中、母はこの部屋を脱出する方法を思いつき実行しようとします。

このときの必死な母の様子は、狂気すら孕んでいて見ていて怖かったですが、

このチャンスを逃したら一生部屋の中なわけですからね…。

 

5才の子どもを使っての脱出は無事に成功し、母と息子は外の世界へと出ていきます。

初めて見る本物の木々、母以外の人間、めまぐるしく変わる風景。

これらがジャック視点で映されるシーンが何度もあって、

彼の心の戸惑いだとか、興奮だとか、そういうものがリアルに伝わってきました。

 

最初は怖がっていた『世界』の情報にも、だんだんと慣れていくジャック。

反対に、失った7年という長い月日に戸惑い、受け入れられない母。

ふたりは同じ『世界』にいるのに、まったく違った景色が見えていて。

狭い部屋にいたときはひとつだった心が、

なんだか遠く離れてしまったような感じがして切なかったです。

 

心身が疲弊している母でしたが、救ってくれたのもまたジャックでした。

母からもらったお守りを真似して、自身も母にお守りを渡す。

ずっと伸ばしていた髪を思い切って切るシーンは、

ジャックの強く、思いやりのある心を感じてぐっときました。

 

5才の頃、自分はいったい何をしていただろう。

思い返してもあまり覚えていないなぁ。

映画の中で、5才の心はとても複雑な動きをしていました。

きっとジャックも大人になったら忘れてしまうこともあるのかな。

 

母にとっては苦く辛い思い出のある『ルーム』。

ジャックにとっては、母と過ごした楽しい思い出のある『ルーム』。

ふたりはあの狭い部屋に訪れて、それぞれがルームにサヨナラを告げます。

それは、過去へのお別れでもあって、

新しい未来に対しての『こんにちは』でもあるような気がしました。

 

部屋からの脱出シーンは、本当に本当にハラハラして、

どうかうまくいきますように!!と映画を見ながらずっと思うほどでした。

それから、ジャックがとてもとても可愛かった。

可愛いなぁ、なんて思いながら見る映画じゃない気がしますが…。