おうちで映画時間。

アマプラなどで見た映画の感想を書いています。

映画感想『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』あなたはどの漂流話を信じる?

 

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』2013年

 

インドで動物園を営む家庭で生まれ育った少年パイ。

ある日、カナダに移住するため家族みんなで船旅に出るが、嵐に襲われ船は沈没。

パイは小さなボートで荒れ狂う海に出ることになるが、

そこに乗り合わせたのは獰猛なトラだった…。

 

パイというひとりの少年の生い立ちから始まり、

船の沈没、そしてボートでの漂流、そこからの生還劇が描かれた映画でした。

トラと一緒に仲良く冒険するのかな?

なんて甘い考えで見始めたわけですが、まったくそんなことはなく。

海の真ん中で漂流するという過酷な現実と、驚くべきサバイバル術、

トラとの戦いと、ともに過ごすための方法の模索などなど、

ハートフルどころか、生きるか死ぬかのデスサバイバルが繰り広げられていました。

 

突如たったひとりぼっちになってしまったパイ。

そして偶然乗り合わせた動物園で飼育していたトラ、リチャード・パーカー。

波に任せるままの彼らの旅はとてつもなく過酷です。

パイは、広い海での生還方法を考えるだけじゃなくて、

トラから身を守る術も考えなければいけないという地獄のような環境。

しかし途中で、彼は気づきます。

このトラの存在が自分にとっての心の拠り所だということに。

言葉も通じない、下手をしたら襲われる、そんなトラから与えられる

緊張感や恐怖心が生への希望になっていたのだ、と。

そうしてパイは、そのうちこの一匹のトラを相棒だと思うようになります。

 

世界でたったひとりぼっちになってしまったら、きっと心が壊れちゃう。

言葉がなくても、わかり合えなくても、

そこに誰かがいるのってものすごい安心を感じるんだろうなぁ。

過酷な旅を続ける中で、そういう絆のようなものを感じました。

が、後にそれはパイの一方的なものだとわかるわけですが…。

それを見せられたとき、パイと同じように悲しい気持ちになってしまいました。

 

どうにかこうにか生還を果たすパイなのですが、

ここからのどんでん返しというか、お話がものすごくて、

背筋が凍るような思いになりました。

というのも、この『ライフ・オブ・パイ』という作品、

パイの語る『海を漂流する話』が2パターン存在するのです。

1つは映画で見てきたトラと漂流するお話。

そしてもう1つは、パイが『嘘』だと語る漂流話。

どちらが真実か、その答えは見ている人に委ねられているという作り。

 

私は、トラと過ごした漂流話を信じたいです。

なぜなら、そのほうがロマンがあるから。

 

さて。

この映画ですが、映像がとても美しかったです!

オープニングの動物園の様子、インドの風景、クラゲ大発生の光り輝く夜の海、

ウユニ湖のように美しい凪いだ海。

特に海に出てからは神秘的で美しくフィクションのような光景が広がっています。

 

でももし仮に嘘の漂流話が『真実』だとしたら、

このあまりにも現実離れした美しすぎる海での出来事も

嘘のように見えてきて、やっぱりちょっと怖くなるのでした。