おうちで映画時間。

アマプラなどで見た映画の感想を書いています。

映画感想『アンテベラム』ないはずのモノがそこにある。

 

『アンテベラム』2021年

 

南北戦争の時代。黒人女性のエデンは軍によって虐げられる生活を送っていた。

農園で黙々と働かされる日々の中、エデンは脱出の機会をうかがう。

それから150年が経過した現代では、

同じく黒人女性のヴェロニカが本の出版記念イベントを行っていた。

しかしその帰り道、彼女を悲劇が襲う…。

 

作中に仕込まれたとある仕掛けに度肝を抜かれました!

まさかそんな展開になるなんて…!!

びっくりしすぎて見ている途中「え?」と声が漏れてしまうほど。

映画館で見ていなくてよかったです。

 

映画は三部構成のような作りになっていて、

前半は、南北戦争時代の黒人が虐げられている様子が描かれ、

中盤は、一気に時代が変わり現代を舞台に物語が進みます。

そして後半、とあるアイテムをきっかけにすべての話が繋がる、という感じ。

 

私は正直あまり歴史が得意ではないのですが、

この映画を見て、こんな時代が存在していたんだ、と胸が痛みました。

差別というのは、どの時代にも確実に存在しているもので、

小さいものだと、学校の中にだってあると思います、イジメとして。

人と違うから、なんだか気味が悪いから、単純に嫌だから。

そういう人間の心が溢れ出したときに、差別が生まれてしまうのだと思う。

これを解決するのは本当に本当に難しいことだと思います。

映画の中で、黒人の方達が理不尽な目に遭っているのは、とても恐ろしかった。

人間の怖さを見た気がしました。

 

作中にダニエルという軍人が出てきます。

彼はとても優しそうな雰囲気で、少し恥ずかしがり屋な感じです。

黒人女性にも照れたり、可愛いと言ったり。

中には優しい人もいるんだな、と思った矢先、彼は変貌して女性を殴ります。

きっと根は優しいのだと思う。

けれど、ここは『虐げるのが当たり前の場所』で『自分の立場は上』だから、

そういう心の弱さが彼を変えてしまったのかな、なんて思ってしまいました。

 

さて。

映画の序盤で主人公である黒人女性エデンはかたくなに名前を口にしません。

どういうことなんだろう?とずーっと思っていたんですが、

それも物語後半になってくると意味がわかります。伏線だったんだ!と驚きました。

 

中盤。

ずっとエデンの話が続く中、あるとき目覚めると時代が現代に変わっています。

そしてヴェロニカという黒人女性の話に変わるわけですが…。

正直この時点だと、ヴェロニカの前世かなにかがエデンだったんだ、と思いましたが、

実際はまったく違う展開で、最初にも書きましたが度肝を抜かれました。

エデンの時代には存在しないとあるアイテムを見かけたとき、鳥肌が立つ気分でしたね。

終盤は、ちょっと予想していなかった展開になって、いろんな意味でびっくりしました。

エデンもあんなことしちゃって、この後なにかの罪に問われそうだけど…、みたいな。

 

こちらの映画、映像がとてつもなく綺麗だな、と感じました。

広大な敷地を長回しで撮る映像だったり、薄紫の空の色だったり。

エデンが戦地を馬で駆け抜けるシーンは圧巻です。

心が苦しくなるシーンが多々あるので映画館で見たくない映画だけれど、

映像が美しいので、同時に映画館で見たくなる映画でもありました。