おうちで映画時間。

アマプラなどで見た映画の感想を書いています。

映画感想『LION/ライオン~25年目のただいま~』25年間、迷子。

 

『LION/ライオン~25年目のただいま~』2017年

 

インドに住む5歳の少年サルーは、ひょんなことから回送列車に乗ってしまい

自宅から遠く離れた場所へと連れていかれ迷子になってしまう。

家の場所もわからずなんとか暮らしていたサルーだったが、

オーストラリアの夫婦のもとに引き取られることに。

やがて成長したサルーは、過去の記憶を取り戻し本当の家を見つけようとする…。

 

迷子になった経験はないけれど、

もし自分が5歳のときに迷子になっていたらずっと泣きわめいていたと思う。

それがたとえ家のすぐそばだったとしても。

子どもにとって、親から、家族から離れるのって耐えがたい苦痛を伴うはず。

どうしようもない不安、漠然とした怖さ。

そういう心の揺らぎのようなものが、この映画からは感じられました。

 

なんというか…。

迷子になったことないのに、まるで過去に迷子になったことがあるような。

そんな錯覚に陥るくらいのリアル感。

どこまでも走る列車の外を見つめる大きな瞳、

大人に混ざって駅で知っている地名を言葉にし続ける声、

あてどもなく見知らぬ土地をさまよう足取り、

そういう仕草から、迷子になった不安が伝わってくる。

大人の目線で、私はそのサルーの姿を見ているわけですが、

どうしようもなく胸が締め付けられる気持ちになるのです。

 

駅のホームを根城にする家のない子どもたち。それを捕まえる大人たち。逃げるサルー。

優しい女の人についていっても、裏切られ。

過酷な状況でサルーはなんとか生き延びていきます。

そうしていつしか、学校のような施設のような場所に連れていかれ、

運よくオーストラリアの夫婦のもとへ養子として迎え入れられます。

 

ここまでの流れが本当に本当に緊迫感があって、ドキドキしていました。

サルーはとても強い子で、たくましくて、すごいなと思います。

生きるのを諦めないって、こういうことを言うのかな。

 

インドから遠く離れたオーストラリアで成長していくサルー。

成長していく過程で、だんだんと過去の出来事を忘れていって…。

だけど大人になったある日、突然思い出します、子どもの頃のことを。

自分の本当の家を見つけ出そうと奮闘する姿、

だけれど、オーストラリアの両親のことも大好きで。

心の葛藤が伝わってきて、切なくなりました。

 

グーグルアースで見覚えのある場所に辿りついて、

一気に5歳の頃の記憶がよみがえるシーンはどうしたって涙してしまいます。

実話を映画にしたということで、なかばドキュメンタリーのようで、

ラストシーンは涙が止まりませんでした。

 

5歳のサルー役の子の目力がとてもすごくて、そこが深く印象に残ります。

ライオンというタイトルの回収も見事でした!

 

自分の話になってしまいますが、

私はひとりで電車で知らない駅に行くことがとても苦手です。

電車に揺られながら知らない景色、知らない駅を通過していくあの感覚。

思い出しただけでもドキドキとしてきます。

なんだか不安になるんですよね。帰れなかったらどうしようって。

 

だから、この映画の序盤のシーン。

回送列車で知らない場所に連れていかれる描写が怖くて怖くて。

きっと私の中でずっと忘れない1シーンになるんだろうなぁ。

映画を見ていて、そういう印象深いシーンに出会えるのはラッキーなのかもしれない。

何年経っても「ああ、この映画こういうシーンがあったなぁ」と思い出せるから。