おうちで映画時間。

アマプラなどで見た映画の感想を書いています。

映画感想『ムーンライト』孤独を照らしてくれる月明かり。

 

『ムーンライト』2017年

 

麻薬中毒の母を持ち、学校ではいじめられる孤独な少年シャロン

そんな彼を気にかけてくれる麻薬ディーラーの男と、ひとりの同級生。

少年から青年へと成長していくシャロンの物語。

 

フィクションのようなドキュメンタリーのような、そんな不思議な映画でした。

孤独な『シャロン』の生活を少年時代から青年時代まで追いかけていく物語。

シャロンはとても無口で、なにを考えているのかよくわからない。

でも無口だからこそ、こうなのかな、ああなのかな、と思考の余地ができて、

物語の主人公であるシャロンを理解しようという心が生まれた気がします。

淡々とゆったり進む感じもよかったです。より一層物語にのめり込めるので。

 

映画は三部構成になっていて。

『リトル』『シャロン』『ブラック』という章タイトルがつけられています。

この3つはどれもシャロンのことを表す言葉です。

本名はシャロン。あだ名はリトル。

そしていつしか恋心を抱くようになる同級生の少年につけられたあだ名が『ブラック』です。

幼年期、少年期、青年期のシャロンを見ていくストーリーですが、

孤独の中にも希望の光があるような構成になっています。

 

タイトルの『ムーンライト』。直訳すると月の光。

暗い道の中にもいつでも月明かりがシャロンを照らしているような気がしました。

麻薬中毒の母、そしていじめてくるクラスメイト。

そんな闇の中で出会った、心優しい麻薬ディーラーの男とその彼女。

そしてシャロンを気にかけてくれる同級生の少年ケヴィン。

彼らがシャロンにとっての月明かりであり、道しるべなのかな、と感じました。

 

この作品はシャロン以外の人生を見ることもできて、そこがまたおもしろいです。

麻薬ディーラーをしていたことで、シャロンに失望されてしまうフアン。

麻薬中毒から抜けだし新たなスタートを切っても、過去を後悔してばかりの母。

シャロンの唯一の友人であり、一度だけシャロンとキスなどをしたことがあるケヴィン。

彼らの人生の中にも、後悔などあり、

映画を通じて『過去には二度と戻れない』ということを改めて思い知らされました。

 

大人になって密かに恋心を抱いているケヴィンと再開したシャロン

ケヴィンは孤独なシャロンの心を受けとめてくれます。

 

長い人生で、たったひとりでもこういう月明かりのような存在に出会えたら。

きっと幸せなのだ、とそう思いました。