おうちで映画時間。

アマプラなどで見た映画の感想を書いています。

『星の子』ちょこっと感想。

 

『星の子』2020年公開

 

病弱だった娘を救うため、わらをもつかむ思いで手にしたとある『水』。

体質が改善した、と喜ぶ両親は『水』を販売するあやしい宗教へとのめり込んでいく。

成長した娘ちひろはそんな両親の元で、今日も暮らしていく…。

 

とても特別な家族の物語のようにも見えるし、

とても平凡などこにでもある家族の物語のようにも見える。

見終わった後、そう感じました。

というのも、ちひろにとって宗教がある暮らしは普通で、

なんなら生まれたときからなわけです。

その両親も宗教に盲目になってしまった点以外で見ると、娘思いで温かな人たち。

 

なにも事情を知らない人からちひろ一家を見れば平凡に見えるし、

事情を知っていると、なんだか普通じゃないように見える。

今回の映画は宗教がテーマだけれど、こういう事象って普通にあることだよなぁ、と。

 

ちひろを救うために出会ってしまったあやしい宗教。

宗教、家族、恋愛、学校、行方不明の姉。

周囲を取り巻く様々な出来事にちひろの思春期の心は揺らいでいきます。

「自分では決められない」「どうしたらいいかわからない」

中学三年生の傷つきやすい心の描写に胸がぎゅっとなります。

特に物語途中に突如差し込まれたアニメーション。

迷子となったちひろの心と悲鳴が聞こえてくるような演出に惹きこまれました。

 

映画の中で、ヒロインは何度も周囲から「ちひろは?」と疑問を投げかけられます。

中学三年という受験生。これから大人へとなっていく分かれ道。

きっと選べるはずなのに、それでも現状維持をしてしまうちひろ

宗教から離れる。

行方不明になった姉は、自分で選択して一歩を踏み出した。

だけれどちひろにそれができないのは、

やっぱり『宗教のある生活』が当たり前だからなのかな。

心の奥底では疑問を感じながらも、その『当たり前の生活』から抜け出せない。

とてもリアルで、とても難しいものだなぁ、と思います。

 

個人的なお話をしてしまいますが、

私はいわゆる毒親の元で育てられてきました。

幼い頃から精神的に追い詰められて、叩かれたり蹴られたりもしてきました。

だけれど、それが当たり前の生活で、なんにも疑問がわかなかったのです。

周囲の人に「おかしいよ」と言われても、「そうなんだ?」としか思わない。

『おかしい環境』が当たり前になってしまっていた、という経験があります。

星の子を見て、なんとなくそんなことを思い出しました。

 

さて話を戻して。

ちひろと両親は星を見に行きます。

流れ星が見えたという両親と、流れ星が見えないちひろ

ちひろはまだまだ両親の元で暮らしていくけれど、

様々は経験を通して、もうどこかで両親と違うものが見えているのかもしれません。

 

見る人によってはもやもやが残る映画だとは思います。

だけれど、私はとても好みでした。

メッセージ性が強く、考えさせられる作品で、

なんとなくテーマ生の強い学生演劇にも通ずるものがありました。

いつかどこかで演劇にならないかなぁ。

 

原作『星の子』