おうちで映画時間。

アマプラなどで見た映画の感想を書いています。

映画感想『茄子 アンダルシアの夏』自転車で走り抜ける町々。

 

『茄子 アンダルシアの夏』2003年

 

ロードレースの選手をしているぺぺは、

世界三大自転車レースのひとつ『ブエルタ・ア・エスパーニャ』を走る。

街から街へ何日もかけて移動していくレースの最中、この日はぺぺの地元が舞台だった。

様々な想いや困難の中、ぺぺは優勝を目指してペダルを回すのだった…。

 

弱虫ペダルの影響で見始めたロードレースというスポーツ。

この自転車レースの魅力は語り始めたらキリがありません。

1年通してたくさんのレースがある中、特に注目されるのはグランツールと呼ばれる三大レース

春先にイタリアで行われる『ジロ・デ・イタリア』。

夏にフランスで行われる『ツール・ド・フランス』。

そして秋頃スペインで行われる『ブエルタ・ア・エスパーニャ』です。

ツール・ド・フランスは聞いたことある方も多いのではないでしょうか?

21日間に渡り、街から街へ、山を越え、海沿いを走り、優勝者を決めるレースです。

 

今作の主人公ぺぺが走るのはその三大レースのひとつ『ブエルタ・ア・エスパーニャ』。

21日間の総合タイムが良い選手に贈られる優勝と、もうひとつ別の勝利があります。

それは、その日1日ごとのステージ優勝者です。

ぺぺはそのステージ優勝を目指し走ります。

 

ロードレースはちょっとよくわからないな、という方も、

この映画は純粋にぺぺを応援したくなる構成になっていると思います。

スポンサーに嫌われ結果を出さないとチームをクビになってしまうかもしれない状況。

そして地元を走るということで、家族や仲間達が大勢応援してくれていること。

ロードレースではなかなか難しい『逃げ』に乗って勝利を目指すということ。

見ているうちに自然と「ぺぺ、がんばれ」という気持ちがわいてきます。

 

さて。ロードレースには『集団』と『逃げ』というものが存在します。

ぺぺはその逃げに乗ります。逃げ。集団から飛び出す選手たちのことです。

その日の勝利を目指したい選手などが主に逃げに入ります。

だけれど、逃げというのは少人数で、ぺぺの逃げもたった10人でした。

おまけにステージは街の中にゴールする平坦ステージ。

後ろから迫ってくる集団のスピードは速く、

街に入る頃にはぺぺの逃げも捕まってしまいそうになります。

このゴール前の攻防の描かれ方や、作画の感じがものすごい迫力で見入ってしまいました。

 

この映画は、ロードレースの内容だけじゃなく、

少ない描写でぺぺの過去や想いなどもしっかりと描かれていて、

45分とは思えないほど密度が高い内容になっています。

そしてなにより雰囲気がいい。

静かな空気感の中、激闘を繰り広げるレース、そして熱い応援。

静と動のコントラストが美しいな、と思います。

 

ロードレースファンから見ると、

自転車レースの描写が本当に本当に丁寧で感動します。

タイム差のこと、逃げのこと、飛び交うボトル、チームカーとのやりとり、

沿道での「ベンガ」という応援、ブエルタの風景、

入り組んだ街を利用した戦略、落車によるトラブル、悪魔おじさんの存在。

愛のある作品だな、と思います。

 

またブエルタの季節がやってきたら見たくなるんだろうなぁ。