おうちで映画時間。

アマプラなどで見た映画の感想を書いています。

映画感想『テーラー 人生の仕立て屋』バイクで駆けつけます、スーツ姿で。

 

テーラー 人生の仕立て屋』2021年

 

高級スーツの仕立て屋を経営しているニコスとその父。

しかし時代の変化からか経営不振になりついには店は差し押さえのピンチに。

一線を退いた父の代わりに店をなんとかしようと立ち上がるニコスは、手作りの屋台で街に繰り出し、

ひょんなことからウェディングドレスを仕立てることになったのだった…。

 

一風変わった仕立て屋さんのストーリー。

軽快なリズムから始まった映画は、所謂サクセスストーリーになるのかな?

と想像したんですが、これがなかなか紆余曲折な感じで。

「え!?そうなるんだ!?」と個人的に驚くような展開が待っていました。

 

まったくお客さんの来ない高級スーツの仕立て屋さん。

ニコスはゴミ捨て場から使えそうなパーツを持ってきて手作りの屋台を仕立てます。

ありったけの生地を持って露店販売するも、成果は上がらず。

しかし、ニコスの元にひょんなことからウェディングドレスの仕立ての話が舞い込んできて、

初めてのドレス作りに挑戦していきます。

父が退き最初はひとりだったお店も、お向かいの奥さんオルガや、

その娘の協力もあって、だんだんと騒がしくなっていき。

 

静かだったお店が賑やかになっていったり、

スーツしかなかった店内に華やかなウェディングドレスが並ぶようになったり、

スーツを着用しバイクをかっ飛ばすニコスの姿だったり、

明るい雰囲気や、人生が上向きになっていく様子にわくわくしました。

 

ただ、ニコスは仕立て上手なんですが、どうにも商売が下手で…。

ついつい押されてしまい安い値段で注文を受けてしまいがち。

世渡り上手なほうではなさそうです。でも人がいい!!

そしてなんだか細かいことが気になる性格のようで。

ニコスという主人公もとても魅力的で見ていて楽しい映画でした。

 

でも楽しいだけじゃなくて、ちょっと不穏な部分もあります。

お向かいの奥さんオルガと親しくなったことによって産まれる不和。

やっと上向きになった人生という生地に落とされた一滴のシミのような。

人生楽しいだけじゃないんだな、という苦みがエッセンスとして加えられていて、

それがまた、この映画に深みを与えているように思えました。

 

それでもニコスは前を向いて。

今日もどこかの街のどこかの道で、

ウェディングドレスを仕立てているんだろうなぁ。